最高裁判所第二小法廷 昭和24年(オ)232号 判決 1952年4月18日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人弁護士坂本吉勝同金子汎利の上告理由第一点について。
戦時補償特別措置法六〇条七項は「前項の規定により申し出をした者は昭和二三年九月三〇日までに戦時補償特別税のうち当該土地若しくは建物……の対価の請求権に課せられた戦時補償特別税額を納付し、第三項に規定する金額を支払い、且第四項の規定により第三項に加算して支払うべき金額があるときは当該金額を支払はなければ第一項(及び第二項)の規定による土地若しくは建物、……の譲渡を受けることができない」と規定しているのである、そして第四項の有益費についてはその有無金額については譲渡申出者においてこれを予め知ることは困難であるのみならずその有無金額について争がある場合もあるのであるからその支払につき期限を画し有益費の先給付を命ずることは合理的根拠がない、また元来売買では目的物と代金とはその給付につき同時履行の関係に立つべきことを原則とするのであるから本件の如く被上告人の譲渡申出に対し上告人が譲渡を肯じないような場合にその代金に相当する第三項に規定する金額を先給付せしめることは妥当でない、それゆえに前記第七項の規定は戦時補償特別税の納付期を昭和二三年九月三〇日と定め、代金、有益費等は物件の引渡と引換え給付の関係に立つ趣旨であると解するを相当とする、然らば原判決の法律解釈は正当であつて論旨は理由がない。
同第二点について。
しかし上告人が本件建物を被上告人に譲渡する意思表示をなしかつその移転登記をしこれが引渡をすることは昭和二一年一一月二一日の被上告人から上告人に対する譲受け申出に原因するものであつて閉鎖機関令一〇条一項三号の債務の弁済に該当するものである、従つて右は閉鎖機関たる上告人の特殊清算人の執行に係る行為に当り同令四条一項但書の規定により許された行為と云わなければならない、然らば原判決には所論の如き違法なく論旨は採るを得ない。
よつて民訴四〇一条九五条八九条により主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)